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花粉症 最強の漢方薬!!

 

 

 

 

 

くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、流涙、眼の痒み・・・

 

辛い! 呼吸が苦しい! どの薬も効かない!・・・

 

こんな時にも役立つ最強の漢方薬があります。

 

でも・・・要注意!!

 

 

 


 

 

 

■最強の漢方薬! 最強なので副作用にも注意

 

 

漢方薬は一般的に安全性が高いですが副作用もあります

 

 

 

 

 

今回説明する漢方薬は、最強というだけあって副作用のリスクも伴います

 

そのため、花粉症状が辛いからといって万人が気軽に内服して良いものではありません。

 

内服希望の場合は(漢方に詳しい医師と)十分相談する必要があり、また今回のコラムを読んで合わなそうだと感じたら、避けた方が無難です。

 

 

 


 

 

 

■最強の漢方薬は「大青竜湯(だいせいりゅうとう)」有名な漢方薬は「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」

 

 

花粉症に対し、一番多く処方されている漢方薬は「小青竜湯」です。

 

 

 

 

とても有名な漢方薬なので、花粉症で漢方薬が欲しいと希望したら「小青竜湯を処方します」と病名処方されることは多いと思います。

 

病名処方は好ましくなく(前回のコラム参照)、漢方医なら小青竜湯の場合でも詳しく診察してから処方します。

 

花粉症の場合、小青竜湯を基本に考えながら色々な漢方薬を処方しますが、色々な漢方薬の種類に関しては置いておいて、今回は最強の「大青竜湯」の説明をします。

 

 

 


 

 

 

■大青竜湯と小青竜湯・・・兄弟の様な名前でも違うもの

 

 

煩躁(はんそう)という言葉がありますが、花粉症で煩躁の場合に大青竜湯が候補になります。

 

煩躁とは、一般的に落ち着かずイライラしてじっとしていられない状態のことを言います。

 

漢方では、

 

身の置き所がないくらい辛い状態のことを煩躁といいます。

今回の場合は身の置き所がないくらい花粉症状がひどいことを指します。

 

 

 

 

冒頭のどんぐり人形画像の次のような花粉症状が典型例で、身の置き所がないくらい辛い「煩躁状態」です。

 

小青竜湯は水鼻がでるタイプの花粉症に有効なことが多いですが、「煩躁」となるくらい重症の場合は全く効きません。

 

それに対し大青竜湯は、「煩躁」というとても辛い状態の場合に効果を発揮する漢方薬なのです。

 

両者は名前が似ていても違うものなのです。

 

 

 


 

 

 

■大青竜湯が適応になる人は強い実証の人

 

 

煩躁状態なら大青竜湯の適応になりますが、大青竜湯が使えるのは漢方でいうと「実証」の人になります。

 

実証虚証という言葉は漢方診断で重要です。虚証の人には使うことができず、実証の中でも強い実証の人が煩躁の場合に適応となります。

 

虚証の人が大青竜湯を誤って内服したら、動悸や不眠、胃痛など、様々な副作用が強く出る可能性が高いのです。

 

実証は体力が有る人で虚証は体力が無い人、ということが多いですが実際には病気と闘う力が強い人が実証、弱い人が虚証になります。

 

つまり大青竜湯が適応になるのは病気と闘う力がとても強い実証の人になります。

 

 

 


 

 

 

■実証と虚証の見分け方

 

 

見た目の体型や声の力強さなども参考にします。

 

例えば、

がっちりした体型、力強い声なら実証

痩せていて、か弱い声なら虚証

 

 

 

 

でも、必ずしもそうとは限らず、漢方診察の脈診腹診が決め手になります。

 

脈の触れが強ければ実証、弱ければ虚証になり、

 

腹力(手でお腹を押して跳ね返す力)が強ければ実証、弱ければ虚証となります。

 

脈診と腹診で虚証と診断できたら、見た目の体力が有りそうでも大青竜湯の処方はできません。

 

 

 


 

 

 

■大青竜湯のエキス剤は無い

 

 

小青竜湯はツムラ、クラシエ、オースギ、コタローなどの漢方メーカーがエキス剤として製造しているため処方できますが、

 

大青竜湯はエキス剤がありません

 

内服する場合は煎じ薬にするか、製造されているエキス剤を組み合わせて大青竜湯に近いものにするかのどちらかになります。

 

組み合わせる場合は、

 

麻黄湯(27番)+越婢加朮湯(28番)

 

又は

 

桂枝湯(45番)+麻杏甘石湯(55番)

 

になります。

 

上記の麻黄湯と越婢加朮湯を組み合わせる場合、1日3回内服だと麻黄という成分の量が大変多くなり、副作用のリスクが増すので強い実証でも1日2回以下の内服にした方が良いでしょう。

 

 

 


 

 

 

■実証でも副作用に注意しながら慎重に内服する必要あり

 

 

煩躁があり実証と診断できても、発汗・不眠・動悸などの副作用が出現したら減量又は中止する必要があります(間違って虚証の人が内服したら場合は副作用が必ず出ると思ってください)。

 

強い実証の人で、身の置き所がないくらい辛い花粉症状があれば、花粉症にこんなに効く漢方薬(=大青竜湯)があるのか、と感じるでしょう。

 

 

 

 

 


 

 

 

■証が合えば風邪にも使える大青竜湯

 

 

風邪のひき初めに葛根湯を内服したことがある人は多いと思います。

葛根湯は、実証の人が内服できる漢方薬ですが、さらに実証になると麻黄湯、麻黄湯よりさらに実証になると大青竜湯の適応になります。

 

例えば、インフルエンザに対し麻黄湯を処方されることがありますが、麻黄湯より実証だと診断できたら、大青竜湯の出番です。

 

大青竜湯は、風邪やインフルエンザでもやはり煩躁状態で強い実証の人の場合のみ適応になる漢方薬です。

 

そのような状態の人が内服したら、本当に驚くほどよく効く(煩躁が治ってしまう)、素晴らしい漢方薬なのです。

 

ただし、証が合わないのに間違って内服してしまうと危険な漢方薬ともいえるので、注意が必要です。