■漢方薬・西洋薬の得意・不得意について
漢方薬や西洋薬の得意・不得意について、例を挙げて説明します(経験に基づくものです)。
①血圧を下げる、血糖値を下げる、コレステロール・中性脂肪を下げる
漢方薬→✖ 西洋薬→◎
下げると報告されている漢方薬はありますが、経験上、血圧・血糖・脂質を下げることに対しては、漢方薬では無理があります。
食事・運動療法が基本ですが、下がらない場合は西洋薬の内服等が必要になります。最近の薬は副作用が少なく、よく効くものが多いです。万が一副作用が出てもすぐに中止して他の薬に変更すれば問題ありません。薬を飲みたくないから、又は副作用が気になるからという理由で薬を飲まずに、数値が高いのを放置すると危険です。現在無症状でも、放置すると将来心筋梗塞や脳梗塞を発症する確率が確実に高くなります。健康寿命延伸のためには、血圧・血糖・脂質コントロールは極めて重要です。
血圧・血糖・脂質コントロールは漢方薬の苦手分野で、西洋薬に軍配が上がります。
②花粉症・アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎
漢方薬→〇~◎ 西洋薬→◎
効き目だけで考えると西洋薬の方が強いですが、漢方薬で体質にマッチするものがあれば、漢方薬の方がよく効くこともあります。漢方薬の利点は眠気・口渇などの副作用がないことです。漢方薬と西洋薬を併用するのも良いと思います。
③痛みの治療
漢方薬→×~〇 西洋薬→〇
痛みは冷えると悪化することが多く、漢方薬の場合は温めるものを使うことが多いです。また、漢方では痛みを発散させて治すという考え方をするので、発散させるようなものを使うことが多いです。
薬の切れ味では、西洋薬の方が上ですが、副作用が出やすく、漢方薬を内服しながらひどい時に西洋薬を内服する、という方法もあります。
④婦人科疾患の治療
漢方薬→△~◎ 西洋薬→〇~◎
花粉症の場合と同様に、体質にマッチするものがあれば漢方薬がよく効きます。
⑤冷え性
漢方薬→◎ 西洋薬→×
冷え性の場合は西洋薬での治療法はありません。漢方薬の得意分野です。
⑥胃の痛み・胃食道逆流症(逆流性食道炎)
漢方薬→△~〇 西洋薬→◎
漢方薬が有効な場合もありますが、西洋薬を使った方が良い場合もあります。最近の西洋の胃薬は副作用が少なく、安心して内服できるものが多いです。
⑦便秘・下痢
漢方薬→〇~◎ 西洋薬→〇~◎
漢方薬も西洋薬もどちらも効果が期待できます。漢方薬の場合はお腹を温めたりすることも可能で、薬の種類が豊富です。
⑧肥満治療
漢方薬→△ 西洋薬→△~〇
西洋薬の場合は食欲抑制剤が中心になりますが、効果には個人差があります。
食欲が抑制されれば太りにくくなりますが、脂肪を燃焼させるためには運動が必要になります。
従って、食欲を抑制させただけでは真のダイエットはできない、と当院では考えています。
漢方薬の場合は余分なもの(この場合は脂肪)を外に追い出す効果が期待できます。ただし、漢方薬を内服するだけでは脂肪を追い出すことはできず、食事運動療法をしながら漢方薬を内服すれば、(食事運動療法だけの場合よりも)脂肪を追い出す効果が期待できます。
⑨風邪治療
漢方薬→×(◎) 西洋薬→×
漢方薬・西洋薬とも×だと、どうやって治療するの?
と思う人が多いと思います。どうやって治療するかというと、
以前のコラムhttps://www.sono-cl.com/column/59/
を参照してください。
風邪の場合は、薬で治療するのではありません。安静にして風邪症状をどんどん出させて止めないことが一番の治療です。もし単なる風邪ならば、西洋薬は症状を止めるものしかないため、治るのを遅くしてしまいます。単なる風邪の場合で体力が普通にあるならば、病院受診するという行動をとった時点で治るのを遅くしているのです。
漢方治療の場合は、自然治癒力を高めるという治療になり、風邪の初期・中期・後期で薬が異なります。風邪は時間が経てば治るため、経験上中期以降では効果が分かりにくいです。
上の×(◎)について
×としながら◎にした理由
漢方薬で風邪を引きにくくすることは可能で、当院では得意としています。引いてしまった後は治るのを待つしかないけど引かないようにするのは得意なため、◎としました。